富士山 【須走口から不浄流し】
【須走口五合目-外輪山-不浄流し-須走口五合目 2011.6.4】



 豪雪だった今シーズンも春を迎えると当たり前ながら雪どけが進む。春スキーシーズンも終わる頃になると自然と雪の残っている富士山のことを考えてしまう。GWに火打山を滑ったあと、みなつりさんが富士山を滑るつもりと言うので、同行させてくださいとお願いした。みなつりさんが昨シーズン富士山を滑った時にスノーボーダーのたかやさんと知り合いになり、二人で今回の不浄流しを滑る計画を立ててくれた。

 富士山の「○○流し」というのは溶岩流の跡地のことで、窪んだ谷筋に雪が遅くまで残り、春にはスキーやスノーボード向きのゲレンデになる。「不浄流し」と呼ばれる谷はいくつかあって紛らわしいが、スキーヤーとスノーボーダーが注目する「不浄流し」とは、宝永山に向かって流れる雪渓のこと。ここが富士山で一番遅くまで雪が残っている。宝永山に一番近い登山口は富士宮口五合目だが、今回は震災の影響で道路が寸断され、夜間は通行禁止になっていた。日本一高い富士山を登るにはふもと前夜泊で早発ちしないと時間的に厳しいので、今回は須走口五合目から登った。


 みなつりさん、たかやさん、私の3人それぞれがマイカーで前夜にアプローチ。日が昇ると初顔合わせのたかやさんにあいさつして4時半過ぎに出発。

 開山前で売店もトイレも鍵がかかって入れないが、駐車場には車が20台くらい。登山者の他に星を見る人、日の出を見る人など。雲海が眼下にひろがりすがすがしい。そして山は快晴のグッドコンディション。
パッキングする二人
行く先を眺める ブル道をひたすら歩く
 登山道に並行するブルドーザー道を使って登る。3人とも長い竿(スキー、ボード)を担いでいるので切り開きの方が歩きやすい。

 山頂は見えているがまだまだ先は長い。高山病対策も意識して休憩をはさみながらじわじわと登る。
動きはじめると暑い

 3時間足らず歩いて雪渓にとりつく。上部で雪が固くなっていることを予測して最初からアイゼンを装着。みなつりさんいわく去年より雪が少ないらしい。今シーズンは日本海側は大雪だったが内陸では事情が違うようだ。
雪渓に取り付く
雪が増えてきた
 他のスキーヤーと抜きつ抜かれつしながら雲海の上の雪渓を登る。きれいな雪の斜面がどんどん広がってきてわくわくする。
 「ここで滑ってもいいなあ。」 
 「いや、不浄流しはもっと期待できるはず。」
小休止
 となりの吉田大沢からの登山道が見えてきた。尾根のあちこちに登山者の姿が見える。スキーヤーにとっても登山者にとってもむこうの方がメジャーだ。
ひたすら登る ヘロヘロで声も出ません
 外輪山が見えたら不浄流しのある左へ進路を変えて広い雪渓を直登する。毎度のことだけど、空気が薄くて3歩歩くだけで鼻水だらだら、ハァハァゼェゼェと変態ストーカー状態。こんな調子じゃもっと高い山を登るのは厳しいなあ。気合十分のたかやさんが先頭に立って励ましながら引っ張ってくれる。

フェンスにえびのしっぽ 左の鳥居は白山岳方面
 出発してから7時間足らず、ヘロヘロになってお鉢の周回道に到着。水をがぶ飲みしつつ、今回は行かない剣ヶ峰や周りの風景写真を撮ったりしながら呼吸が治まるまで休憩。吉田大沢から剣ヶ峰へ向かう人たちがぽつり、ぽつりと通り過ぎて行く。

 息が整ったらお鉢をへつって目的の不浄流し先端へ向かう。歩き始めてすぐにそれらしき雪渓が見えてきたが、何だか雪が少ない。
ドロップポイントへ向かう
不浄流しの雪渓を見下ろす 待機するたかやさん。周りに雪が少ない
 本当にココが不浄流しのドロップポイントか、確認のため道の裏側に偵察に行ったみなつりさんが戻ってきた。やっぱりここで間違いないとのことで、雪渓の突端に出て滑降準備。テレ板の準備をしていると、やって来た登山者に「まちゅらおさんですか?」と尋ねられる。富士山のあらゆる雪渓をがんがん滑る絶倫テレマーカーらしい。


 さあ雪は少ないが滑降開始! ところが期待はずれの堅いコーンスノーに手こずる。これは転ぶと危ないと思った矢先に転倒! 幸いほとんど滑落せずに止まって一安心。しばらくはシュテムで慎重に下りる。

 「僕はバックカントリーを滑るには下手っぴですよ。」と謙遜していたボーダーのたかやさんが一番堅実に滑りおりていく。
なんじゃこの雪はー

 しかし下へ行くほど雪は緩み、しっかりエッジングすればパラレルでターンできるようになる。もう安全と分かれば広いゲレンデで撮影会が始まる。
下でカメラを構えるたかやさん
はい、オールドスタイルで滑ってます 奇声を発し始めたみなつりさん
すいすい下りていくたかやさん  中腹は快適なザラメで思い思いのシュプールを刻む。ひさしぶりに味わうスキーの反動を利用した弾むような感覚。気持ちよく滑ることができた。

たかやさん みなつりさん
 さらに下るとベチャ雪に近くなるが、雪が無くなるまでできるだけ滑る。そろそろ元の登山道に戻ることを考え、一旦板を外して左手の雪渓へ渡るが、さらにもうひとすべり。


 ここで滑降終了。登りの須走道に戻るべく左へトラバース。
板を撤収
砂利道の御中道?を行く お天気の富士山をバックに
  みなつりさんとたかやさんの会話の中で「おちうど」という言葉がしきりに出てくる。落人?この辺の昔話でもしてるのかなと思ったら、富士山中腹を周回する「御中道(おちゅうどう)」のことだったと後で気付く。結局御中道とはっきり判別できる道は見つからないまま、登りに使った須走ブルドーザー道と合流。

道の駅「ふるさと豊田」
 去年より雪が少ないとか、登った雪渓をそのまま滑ればもっと楽しめたかもとか、しゃべりながら長い下りをだらだらと下り続ける。足元が砂まみれになってちょうどいい時間に無事下山。

 みなつりさんたかやさん計画ありがとうございました。来年も滑りに行きましょう。

 下山後は御殿場市の御胎内温泉で汗を流し、怪物メニューで有名という「魚啓」へ。僕が頼んだ特上鰻丼はこってりした巨大な蒲焼きが二段積み! お腹が減っているはずなのに途中から食べるのが苦行になり、のつのつしながら何とか平らげた。次の週お腹の調子が悪かったのはこれのせい? 隣の客は人の顔より大きい巨大なかき揚げが出てきて「ナニコレ。」。話のネタに事欠かないメニューが目白押しみたいだ。

 家が遠い私は、翌日もう一度富士山に登って吉田大沢を滑ると言う元気な2人とここで別れ、今シーズン終了。滑りのほうは気持ちよく終われました。
特上鰻丼2100円


(更新年月日;2011.8.14)

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