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まずは動画を見てください。興味がわいたら、文章でつづきをどうぞ。 「山スキー」とは、文字どおり、スキーで山に行くことです。私達はゲレンデの外の雪のあるところへ、滑るために出かけます。「雪さえあればどこでも滑る!」(←どこかのコマーシャルで聞いたような・・・)が基本コンセプトです。 |
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左の写真はスキーを履いたまま山を登っている様子です。後ろを歩く人の左足を見ると、かかとがスキー板から外れているのが分かりますね。山スキーのビンディングは登る時、つま先を支点にしてかかとをスキー板から離すことができます。離すことができるから、大股のすり足で歩くことができるわけです。(袴をはいたお殿様のように。) でもそれだけだと、坂を登る時、前に進もうとしても、スキーは意に反して後ろに滑っっちゃう、ということになってしまいます。実は左の写真にはもうひとつ仕掛けがあります。スキー板の裏に「シール」という滑り止めが付いているのです。 |
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「シール」とは、表(接雪面)が起毛したじゅうたんのようになっていて、前には滑るが後ろには滑らないというスグレモノの滑り止めです。裏(スキー板との接着面)には糊が付いていて、付け外しができます。 余談ですが「シール=seal」とはアザラシの毛という意味です。昔は接雪面にアザラシの毛が使われていたそうです。今ではナイロン、モヘアなどがよく使われます。店の人の話によると、グリップが強いのはナイロン、乾雪でよく滑るのはモヘアだそうです。 |
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さて、山スキーは上記のように、スキーを履いたまま登るわけですが、別に履かずに登っても構いません。春先の雪の締まってくる時季には、右の写真のようにスキーを担いで登ることもあります。しかし冬の深雪では、スキーを履いた方が浮力があるため、ずっと登りやすくなります。また締まった雪を歩く場合でも、すり足で「滑りながら」登ってゆくことができるので、スピードアップできる場合があります。これらが「山スキー」という道具を持つことのメリットです。 またまた余談ですが、ものの本によると、深雪を「かんじき」で歩く場合と山スキーで歩く場合、後者は前者の2倍体力を消耗するが、スピードは3倍だと書いてありました。(まさしくシャア専用!?) |
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山スキーの道具については色々と疑問を持たれる方が多いようなので、実際に使用した感想を含めて少し詳しく紹介します。
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スキー板
基本的にゲレンデで使う普通のアルペンスキーと同じでO.K.です。もちろん山スキー専用の板も市販されています。専用板は、荷物を沢山担いだ時の荷重に強い、軽くて歩行時疲れにくいなどの点を工夫して作られているようです。私のスキー板は2代目から普通のゲレンデ用スキー板を使用しています。
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これが一番ポイントです。はじめの説明のように、かかとの上がる山スキー用である必要があります。ゲレンデ用では基本的には代用できません。
山スキー用のビンディング(山ビンディング)は、登る際にはかかとが上がりますが、滑る時はかかとを固定して滑ることができます。滑りは普通のアルペンスキーと全く同じです。 普通のビンディングを山スキービンディングにする方法もあります。歩行時に特殊なアタッチメントを装着することで、かかとの上がるビンディングに変換することが可能です。滑降時はこのアタッチメントを外します。「アルペントレッカー」という商品名で市販されているようです。私は使ったことがないので詳しくは分かりません。 山ビンディングでは、通常ブーツとビンディングを紐でつなぐ「流れ止め」を使用します。ゲレンデビンディングの「ストッパー」は付いていない場合が多いです。流れ止めを付けておくと、深雪斜面でスキーが開放した際にスキーを見失う心配がありません。逆にゲレンデのように圧雪された斜面では、流れ止めがあると開放したスキーが跳ねながら体についてきて危ないので、ストッパーの方が適切と言えます。流れ止めとストッパーの両方を装着している人もいます。 ブーツ
これも山スキー用のブーツがあります。一般に「兼用靴」と呼ばれ(もう死語かもしれません・・・)、歩行モードと滑降モードの切り替えができるようになっています。歩行モードにすると足首の部分をロボットの様に前後に動かすことができます。普通のスキーブーツでもモードの切り替えができるモデルがありますが、可動範囲は兼用靴の方が段違いに大きいです。他の特徴として、靴底が登山靴と同じラバーソールになっています。
私は最初はDACHSTEINのTour Extremという兼用靴を買いました。1994年のことです。バックルは一つだけでレンタルのスキーブーツのような構造ですが、歩くのも滑るのも快適で不便は感じませんでした。兼用靴はよくできてるなあと感心したものです。 2代目は滑り重視にしようということで、REXXAMの(ゲレンデ用)スキーブーツを山スキーに使いました。兼用靴のように自由に動かせない分、歩くのは少し辛くなりましたが、5年間靴擦れ以外にこれといったトラブルは起こりませんでした。靴底がプラスチックなので岩や氷の上を歩く時に滑りますが、こうした場面ではアイゼンを装着して対応しました。 肝心の滑りの方はというと、前の靴より格段良くなったという感触はありませんでした。私の技術が未熟だから感じないのかもしれませんが、ショートターンもカービングターンもモーグルも、スピードを競うのでなければ兼用靴で十分楽しめます。 以上の経験から、次は兼用靴を買おうと思っています。最近の兼用靴はバックルが多く、普通のスキーブーツにより近い作りをしているようなので、大半の人が滑りに不満を感じることはないと思います。 最後に失敗談をひとつ。2代目の装備を揃えた時、新しいカービングスキー(上の写真)に対し、初代DACHSTEINブーツとREXXAMブーツの両方を状況に応じて使い分けるつもりでいました。ところがDACHSTEINのブーツでは板がズレまくって全然思うように滑れません。原因はブーツセンターがずれていたからで、その頃使っていた山ビンディング(Fritschi ディアミール)は後ろ側だけを動かしてブーツサイズを調節する仕組みでした。昔の細長いスキーならこれで対応できたのかもしれませんが、カービングスキーではNGです。REXXAMブーツに合わせてビンディングの取り付け位置を決めていたため、DACHSTEINブーツに対応できませんでした。ゲレンデ用のビンディングはサイズ調整のとき前後が同調して動くので、ブーツが変わっても問題ありませんが、ディアミール含め一般的な山ビンディングにそのような仕組みはありません。同調するシステムは重くなりそうなので、軽さが重要な山ビンディングで採用されることはないでしょう。 上記の失敗は兼用靴と普通のスキーブーツの靴底の大きさが大きく違うことにも原因があるのかもしれませんが、基本的にブーツとビンディングはセットで揃えなければならないと考えた方が良いでしょう。 と書いた後に、マーカーがバックカントリー用のビンディングを扱っているのを見つけました。「Duke」、「Baron」という名前で売られています。前後が同調して動くので、これならブーツが変わってもO.K.です。歩行モード⇔滑降モードの切り替えはブーツを脱いで行うので、行動中勝手に切り替わる心配が無い分、切り替えの度にスキーを脱ぐ面倒さがあります。ディアミール等よりかなり「がっしり」感がありますが、その分重いです。滑り超重視やジャンプしたい派にはマーカーのビンディングもいいかもしれませんね。 |
ここ数年人気急上昇のテレマークスキー。ゲレンデで片足のかかとを上げたまま滑っているテレマーカーをよく見かけます。
テレマークスキーも山スキー同様、もともと山を滑る道具です。シールをつけて登っていくという点では山スキーと全く同じです。しかし、テレマークスキーは滑る際もかかとをフリーにしたまま滑ります。右の2枚の写真は上がテレマークスキー、下が山スキーでの滑降ですが、テレマークターンは、かかとが離れる分だけ足を大きく前後に開くのが特徴です。テレマークスキーもまた、ビンディング、ブーツに専用のものを使用します。スキー板はゲレンデ用でも特に問題ありません。 私は07シーズンからテレマークをはじめました。思った以上に難しく、まともに滑れるようになるまで苦労しました。はっきり言って滑りはアルペンにかないませんが、ヒールフリーの軽快さはなかなか楽しいです。滑りもアルペンとは全く別と割り切って、技術を極めていくのが楽しいかもしれません。 |
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(更新年月日;2022.5.12)
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