利尻山
【利尻北麓野営場−利尻山往復 2010.5.6】



利尻空港から見た利尻山
 今年のGWはどこかで山スキーしたいなあ、でも信州のメジャーどころは大体滑りつくした感があるし、東北へ足を伸ばそうかなあ、などと考えていたら、TMD先生から利尻山へ行きたいという話があった。日本の北の果て利尻山は最北の百名山。バックカントリースキーができる山としても最北と言っていい。これは素敵なプランだ、ぜひ乗っけてもらおう、ということで北海道へ飛ぶことになった。
 利尻島の宿に3泊して、3日間の滞在期間のうちの晴れた日を狙って日帰りピストンで滑る計画でのぞんだ。幸い利尻島到着翌日の夕方まで天気がもってくれたおかげで、海を見ながら利尻山をまるごと滑ることができた。


 札幌で営業終了直前のゲレンデでスキーをした後、飛行機で現地入り。東京からのTMD先生とは千歳空港で合流。天気はご覧のとおりの晴天で利尻山がばっちり見えている。観光客はすかさずカメラを構える
利尻空港
利尻空港2
 しかし、低気圧がじわじわ近づいているので天気は悪化傾向。宿の方いわく「登るなら明日です。何とか天気が持ちそうですよ。」とのことなので、翌日早朝に早速アタックすることにした。しつこい喉風邪をひきかけていたこともあってちょっと憂鬱な気分。でもチャンスを逃すわけにはいかない! 腹をくくって早めに就寝した。
出発準備
 標高1721mの利尻山は日帰りとしては結構距離も高さもある。未明の午前3時に起きて登山口の利尻北麓野営場へ車で送ってもらい、登山スタート。4時を回ると結構明るい。空はうす曇りといったところ。
森を歩く。
 しばらくは読図の難しいなだらかな森の中を歩く。登山道のはっきりしない雪の上では、踏み跡や赤布が頼りだ。「何か違うな・・」と勘を働かせながら、軌道修正して的確にルートファインディングするTMD先生の後ろをついてゆく。TMD先生はつぼ足。僕はスキーを履いてシール登高。
まずめざすのは長官山
 40分ほど歩くと大きな沢の根元に出て視界が開けた。これならもう道迷いの心配はない。写真正面の長官山に向かってひたすら登るのみ。左側の尾根に取り付く。
尾根の取り付き
 まだ午前5時だが、暖かいので雪はけっこう緩んでいる。雪から顔を出した木の枝をかわしながら、ガシガシと高度をかせぐ。つぼ足のTMD先生とシールの僕とでめいめい登り易いルートを選び、尾根上で合流するころには2人とも汗だくになっていた。
あっつい暑い
 尾根に出てからもハードな登りが続く。適度に休憩を挟みつつ、ゆっくり確実に高度をかせぐ。
トラバース
 尾根筋はブッシュが出ているので、山肌の雪の付いているところをトラバース気味に登っていく。今回は大丈夫だったが、低温で雪が固まると滑落が恐そう。TMD先生は地形を見ながらスキーを脱いだり履いたり。僕は相変わらずシール登高でごり押し。どっちが良いとも言えない感じのコンディション。
長官山の石碑 山小屋へ一旦滑り込む
 長官山に着くと、目指す利尻山の全容が現れる。まだ雲には覆われていないと分かって一安心。長官山周辺は強風吹きすさぶ風の通り道。後続のTMD先生を待って、尾根の反対側の利尻岳山小屋のあるコルへ滑り込む。


小屋内部を観察 おだやかなランチタイム
 利尻岳山小屋に到着。きちんと整理されている内部を拝見し、ここで昼食。僕は宿で用意してくれた お弁当を食べる。長官山と対照的に風が穏やかなので、落ち着いてお箸でつまめる。雪山ではいつもはパンをかじっているが、やっぱりおにぎりがお腹に通りやすい。


再びシール登高
 軽く腹ごしらえをして再び登りはじめる。山頂が見え、雲も薄くなってきたので調子よくどんどん進む。数ヶ月前に足をヤケドし、しばらく運動できなかったTMD先生はいまひとつスピードが出せず苦しそう。

 ところがどんどん進んだ自分も、だんだん急になる斜面を相変わらずスキーを履いたまま登り通そうとしたため、シールがほとんど効かずにスリップに手こずりながらトラバースする羽目になってしまった。2週間前の御岳の経験が活かされてないと反省。
TMD先生と合流 アイゼンに換装
 何とか尾根筋の安全なテラスに出て一安心。ザックを下ろしてアイゼンに履き替えていると、TMD先生がアイゼンを付けて尾根伝いに登ってきた。
 「そろそろアイゼンに履き替えたほうが・・・ あぁ、もう付けてるの。」



 再び二人で頂上を目指す。雪は柔らかいので危なくはないが、結構な急傾斜をアイゼンを効かせてひたすら登り続ける。
踏み跡は急な尾根をひたすら登っている
山頂で記念撮影
 そして念願の利尻山頂(北峰)に到着。さすがに山頂は風が強い。見渡す景色は360°海! 雪山と海の組み合わせはなんだか変な感じだ。
 200mほど離れた南峰の方が少し標高は高いが、そこへ至るルートは断崖絶壁。スキーではなくピッケルの世界だ。ピークハンターTMD先生はピッケルを持っているが僕は持っていない。自分は待っていることになるだろうなと思っていたら声がかかった。
 「じゃあつっちー君、ちょっくら行ってこようか。」
 「えっ、僕も行くんですか?」
ナイフリッジを上り下り 南峰から北峰を指差す。
 ストックの真ん中を握れという指示にしたがい、TMD先生の後を慎重に付いていく。
 TMD先生 「どっち側へ落ちても助けられないから、気をつけてね。」
 つっちー  「・・・。 こんな険しいとこ歩くん初めてですよ。」


期待と不安の滑降開始
 北峰に戻り、いよいよ滑降のスタート。エッジのかかり具合を噛みしめながら、最初は慎重に斜滑降。うん、雪質良さげ。これならイケそう。
大斜面の滑降
 大丈夫と分かれば後は思い切りよく飛び込むのみ。今日は平日で他に登山客はいない。貸切の一枚バーンを思う存分楽しもう。
TMD先生の滑り1 TMD先生の滑り2
 お互い前後して写真を撮り合いながら快調に飛ばす。おりゃー。


つっちー1 つっちー2
 うりゃー。快適に滑れるつぶの細かいザラメ雪。転んでも痛くないし、ブレーキが効くので安全。


長官山西面
 利尻岳小屋までたっぷり滑りを楽しんだ後も、まだまだ滑りが続く。長官山尾根で小休止した後、登りの尾根ルートではなく沢へ直接滑り込む。滑り出しはかなりの急斜面。
重い雪しぶき 快調に進むTMD先生
 さすがにここまで下りると雪は重い。それでも開放感いっぱいの広大な斜面は好きなように滑れる。


滑ってきた沢を見返す
 ボウル状の斜面を振り子のように揺れながら滑るあたりで豪快なダウンヒルは終了。あとは足元に笹の出た林間を縫うように滑って登山口へ向かう。スノーモービルのわだち沿いに進むと、登山口のすぐ近くまでスキーを履いたままたどりつくことができた。
利尻北麓野営場
 14時すぎにスタート地点に到着。山を丸ごと滑れて満足満足。ここからは宿の車に迎えに来てもらって下山。
利尻山神社(鴛泊)
 登る前に安全祈願をした神社にもう一度行き、無事に山を滑れたことを報告する。このころには雨がパラつきはじめていた。


(更新年月日;2010.8.14)

トップページへ